和尚のちょっといい話
![]() |
寺離れや墓じまい、ひいては直葬に関わる問題が今日の日本社会の中で急浮上してきました。何が故にそのようにクローズアップして来たのかと申せば、これはもう明らかに我が国がかって経験したことのない程の「少子高齢化社会」を迎えている現状から生み出されて来たのだと思われます。では一体なにが問題なのかと問われれば色々ありますが、一番大きな点は家族の経済的な負担で、このところの長きに渡る社会的経済不況があげられ、また長寿社会における核家族化も慣習が適切に子供達に継承出来ない事が問題点としてあげられます。
日本社会が和合専一に今日まで支えられて来たのも、民衆の心の根底には仏教の精神が深く根づいて来たからからこそ家の伝統を守り祖先を奉じて来たのではないかと思われます。その仏教の精神とは一体なんなのかと問われれば「六波羅蜜(ろっぱらみつ」の実践だと思います、資源の少ない小国でありながら日々お互いに助け合い、励まし合い、努力し合い、先祖を尊び、親孝行を旨とし、家族相和していく事が民衆を今日まで支えて来た心だと思います。最近、高齢者の方々からの言葉に「最近の若者は行儀が悪くなった」との愚痴を聞きます。価値観の相違と言ってしまえばそれきりですが、年齢の世代格差による価値観の相違がまた核家族化を促進していくようです。今日の寺離れや墓じまい、直葬の問題はますます、人々との和合関係が薄れて行く前兆なのかも知れません。国際的にも不穏なニュースの続く今日この頃、今こそ人間の心の原点に立ち返るべく大切な時代を迎えているようです。友峰和尚より
大安禅寺で開催されている郷土工芸作家4名による作品展示会「福時」も今日が最終日となりました。先日、東京にお住まいの旧福井藩松平家御当主・松平宗紀様が寄贈して下さった御手製の越前焼壺に、文房流の御家元・姉崎素山先生がお花を活けて下さり、今回初めてのお披露目となりました。
写真の如く壺華一体の見事な風格です。改めて「素晴らしい!!」って叫びました。今回の「福時」に共催されている文房流晴心会野口翠智社中の御家元が直々に生けられたという事で尚更凄みを増したものでした。今日は愈好亭にて、野口先生と、越前和紙作品を展示された長田和也氏のお母様と一緒に慰労の茶礼のひとときを過ごしましたが、話題は松平様御手製の壺と御家元自ら生けられたお花の事で盛り上がったものでした。
越前和紙作家・長田和也氏のタペストリー作品は今回も大変好評で、実際にお茶席で使用されました。和尚も「福時」開催を記念して長田様の作品「和紙行燈」を買い求め寶勝寺の玄関に早速に設えました。
神戸在住の和尚の友人が、家族とともに訪ねてくれました。
4人の作家さんの見事な作品展示会。来年も是非開催して欲しいと願ったものでした。時代の移り変わりとともに郷土の伝統工芸も変化が求められていますが、伝統的工法はぜひとも後世に伝えていって欲しいと思います。友峰和尚より
「第1回 金沢マラソン」が今日開催され実況中継されましたが、近年のマラソンブームも手伝って地元を含め全国からも多くの方が参加されたそうです。マラソンコースが市内の景勝地を巡るとあって、テレビの映像もなかなか金沢らしいアングルとなっていました。朝一番に、寶勝寺広報員の須貝遼さんよりマラソンに参加するとの連絡を受けて応援メールを送りましたが、朝方は生憎の小雨模様だったものの午後からは雨も上がり多くの方が完走できたそうですから、一回目の開催としては大成功だったと思います。
昨日のテレビ番組でも放映されていましたが、1週間に3時間ほど早歩きのウオーキングを励行するだけで、体全体の血管や細胞が活性化され新しい細胞が生まれるそうで、この時期、家の中に閉じこもらないで思い切って外に出てウオーキングすることが、ひいては認知症予防対策にもなるとの事でした。二足歩行の人間にとってはやはり、歩いたり走ったりすることが老化を防ぐ細胞活性化の基本という事です。
さて和尚も最近は、外に出て運動する時間が極端に少なくなっている事に危機感を感じています。今日のような大会に応募して、市民と共に走ってみたいと思ったものでした。マラソンとは言え、お祭り気分満点の金沢マラソンの成功を心から喜んだ一日でした。友峰和尚より
大安禅寺では今日から3日間、郷土の芸術作家4名による「福時(ふくとき)」が開催されています。また文房流晴心会野口翠智社中による生け花展と煎茶席も開催され、午後からは地元を始め観光客の方が多く来られていました。
境内にある渓仙舎と寺内全てのスペースを利用しての展示だけに、作品を直に見る事が出来て見学に来られた方々には大変好評のようでした。先日までは地元仏師の「仏像展」が開催されていましたがそれに引き続いてのイベントで、文化の秋という事も有り皆さんも心行くまで晩秋の禅寺の風情に浸っていたようでした。
和尚も久しぶりに自坊に戻り、ほっと一息ついています。大安禅寺のこの時期の風情には格別なものを感じます。特に愈好亭から眺める景色は、言葉では言い尽くしがたい程の悠久の歴史を感じさせてくれるものです。
さて、自坊に戻れば限られた時間の中での法務遂行となりますが、仕事はそこそこにしてアトリエに篭っての瞑想時間を独り楽しみました。紅葉が強い秋風を受けて舞い散って行く様などは実に爽快な気分にさせてくれます。自然の移ろう姿は無常なるが故に、却って自己の存在の有り難さを感じるものです。今まで気づかなかった事が、加齢とともに悟れるのも摩訶不思議な事です。悟るものも悟られるものも無い、自然界の営みの中に没頭した一日となりました。友峰和尚より
兼六園 秋のライトアップ / 写真提供:金沢市
金沢市内のホテル宿泊料金の急激な高騰がここに来て問題となっていますが、当然この現象は北陸新幹線開業に伴う需要超過がその原因となっているそうです。成る程、昨日友人から依頼され金沢市近郊の旅館を予約したのですが、いつもより3割ほど高いように実感したものでした。それほどまでに金沢では今尚新幹線効果が続いているという事になりますが、7年後の福井駅開通になった場合にも、地元で同じことが起こるのでしょうか? 旅行者にとっては少しでも安価な方が良いに決まっていますから、問題解決の為に良い知恵を出して頂きたいものです。
現在の紅葉は7割程度、ライトアップは11月20日からだそうです。/ 写真提供:金沢市
現在、古い町屋などを改装して観光旅行者に提供する所も増えてきているようですが、とてもとても需要には追いつかない状況のようです。思いきって市内有志寺院が宿坊として開放してみてはどうかと考えてもみましたが、消防法等の問題もあってなかなか難しいようです。この金沢人気が一過性のものなのかそうで無いかは来年頃わかるそうですが、観光客に不評を買わない為にも対策が急がれているようです。そんな問題をよそに、寺カフェを利用される方々は大変喜ばれ、のんびりとくつろいでおられました。寺内もこのところの気温低下で随分と冷え込んできた為、温風ヒーターがフル回転しています。嗚呼!もう厳しい冬がすぐそこまでやって来ていると感じ取る一日となりました。明日からは冷たい雨模様になりそうです、皆様くれぐれもご自愛ください。友峰和尚より
今から1万2千年前から約1万年続いた我が国の縄文時代が、世界中の考古学者から注目を浴びているそうです。先般NHKで放映された縄文時代の生活を紐解いた特別番組は実に面白かった。世界に類を見ない狩猟採集民族として,縄文時代の人々の生活は自然思想を背景に豊かな人間社会を形成しながら歩んだ時代だったそうです。農耕主体となった弥生時代頃から人々の争いが始まり、現代社会に至るまでの人々の歩みは権力闘争の中に生きて来たのかも知れません。今さら縄文時代に戻れるわけも有りませんが、その時代は宗教の必要性など皆無であったと想像します。
大自然の中で狩猟採集のみを生活の基盤としてお互いに助け合いながら大きな集団生活をしていたことが発掘調査を通して徐々に解って来たそうですが、しかも1万年も続いた集落国家は世界中のどこにもなく、我が国の縄文時代のみだそうです。所謂「和の精神国」の基礎を築いたのが縄文人という事でしょうか。1万年前と言いますと遠い昔のように聞こえますが、地球の誕生歴史からすれば実に1日前の話ぐらいの事だと思います。最近、和尚も「自分はどこから来たのか?」という素朴な疑問を自分に問いかけています。日本人として今、縄文人から学ぶべきことが多いように感じた番組でした。さて、本日は午後から富山県氷見市より「楽く楽く法話コース」のお客様が来られました。皆様と共に和気藹々の楽しい時間を過ごすことができました。本日はお参り頂き有難うございました。友峰和尚より
NHKの朝ドラ「あさが来た」が現在もなお高視聴率をキープしているとか。楽しい話題の少ない毎日の中で、明るく力強さを与えてくれるようなドラマの展開に和尚も努めて観るようにしていますが、今朝方はもうひとつ、日本国民をわくわくさせるニュースが流れました。国産初の小型ジェット機MRJの初飛行の様子がライブで全国のお茶の間に届けられ、和尚もフライト機の余りの美しさに感動を覚えました。
今から約50年ほど前に、日本で初めて製造されたプロペラ式国産旅客機YS-11が大安禅寺の上空をかすめながら福井空港に着陸する姿を思い出します。2006年にYS-11型機は採算性の問題から運航を中止したそうです。今回の国産ジェット機は実に半世紀ぶりの製造と聞き少々驚きましたが、世界をリードする工業国日本の誇りを感じます。MRJフライトの様子はまるで丹頂が舞うような美しい姿でほれぼれしたものです。最近よく言われる「国家の品格」ですが、一国民としてやはり国家のプライドを感じさせてくれた瞬間でも有りました。いつの時代でも「自信と誇り」が日本人精神の根底で有る事を感じ取った嬉しいニュースでした。友峰和尚より
福井県越前市に「ねこ寺」として有名な御誕生寺が今人気を集めています。このお寺は元永平寺管長・板橋興宗老師が新しく建立された曹洞宗の禅寺ですが、老師の慈悲で多くの猫がお寺で飼われています。近年のペットブームも手伝ってお寺には県内外から多くの信者さんがお参りに来られ、今や全国にその名が知られています。猫の世話をするのは修行僧の雲水さんだそうですが、その雲水さんも猫ちゃん好きの方が多いそうです。そのうちに「にゃんにゃん寺」と言われるようになるかもしれませんね。そういえば京都には「鈴虫寺」が有りますし、やはり家族動物達は無条件に人々の心を和ませてくれるようです。ねこ寺が有るなら犬寺が有ってもよさそうなものですが、今のところそのような情報は聞いていません。そのうちにきっと「わんわん寺」が現れるかも知れませんよ。犬は激しく吠えるため近所迷惑になるという理由から敬遠されているのでしょうか?
大安禅寺はと言えば今や「イノシシ寺」寸前で、ウリボーを伴った大きなイノシシが平然と真昼間から境内を散策しています。それに加え、まったく困ったことにイノシシのみならず狸、ハクビシンにアライグマ、鹿までが現れる始末。そのうち「大安禅寺自然動物園」になってしまいそうな勢いです。喜んでいいのか悲しむべきか!動物達との共存を思うのですが、悪さをしないでほしいと毎日祈るばかりです。友峰和尚より
越前ガニがこの7日に解禁となりましたが、今年は例年にない高値を呼んでいるようです。と言いますのも今、金沢が北陸新幹線開業に伴う観光客増加が続いており、その影響からか越前ズワイガニが大変人気で品薄状態とか。そんな事「あるんかに?」って言って見ても時期が時期だけに仕方がない事かも知れません。やはりこの時期、北陸の人気の食べ物と言えば「ズワイガニ!!」。漁師さんの一番の稼ぎ商品でも有る越前のブランド品「越前ガニ」が、需要の多い加賀温泉郷や和倉温泉また金沢市内の料亭やホテルへと流れていくのだそうです。我々一般市民にとっては、今年は地元産カニとは無縁になりそうな気配です。秋の味覚は他にも沢山沢山ありますから、そちらの方に目を向けて行きたいと思います。和尚も最近、金沢での自炊が多くなって来た為、マーケットに食材の買い物に出かけるようになりましたが、和尚の大好きな色々な茸が多いのに驚きました。これらは天然物でなく温室栽培だそうですが、それでも嬉しい悲鳴を上げています。子供の頃、大安禅寺の裏山に松茸を始め自然の茸が沢山生えていて、よく父親が料理して食べさせてくれた事を思い出します。とても美味しかったことを覚えていますから、ついつい色々な茸を買い求めて料理しています。加賀野菜も豊富で料理が楽しくなってしまいます。 新鮮な食材の揃う金沢市、カニはなくとも加賀野菜はい加賀? 今が旬のようです。友峰和尚より
降りしきる雨 式台玄関のさるすべり / 寳勝寺にて
中国の詩人・杜牧の詩の一節「深秋簾幕千家雨 落日楼台一笛風」(しんしゅうれんばくせんけのあめ らくじつろうだいいってきのかぜ)です。この時期の詩ですが、中国の昔、秋雨の日は一様に各家が簾をおろし、夕刻になると楼台から風に乗って笛の音が聞こえてくる様子ですが、実に深まりゆく秋の景色そのままに詩を詠んでいます。
一宮市・奥村様より、箱書のご依頼を頂いた作品 / 「空」
雨は無心に降りそそぎ、風も又無心に吹き渡り笛の音すら雨と風に溶け込むように無心な音色を響かせているという、実に絶妙な心境が伝わって来るようです。四季の有る日本での秋の風情は、否が応でも心を響かせてくれるものです。今日は朝からそのような秋雨と時折吹いて来る秋風の中を、寺カフェ利用のお客様がこの季節を楽しむかのように普段よりはゆっくりと過ごされていました。四季の変化と共に、観光地の風情も随分と違うものです。
金沢市内の兼六園なども、今では雪国独特の庭木の雪づりが一段と庭の美しさを醸し出しています。四季の移り変わりの美しい日本、この詩もきっと、中国五千年の悠久の歴史の中での心の安心(あんじん)を見事に表わした和尚の大好きな一節です。友峰和尚より