和尚のちょっといい話

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友峰和尚のちょっといい話 【 第1444話 】
2017年 08月 01日 談

大安禅寺の大鐘

五時を告げる暁鐘(ぎょうしょう)の音色が、大安禅寺の境内一帯に広がっていきます。いつの頃からか、暁鐘を撞くのは寺庭(お寺の奥方)の役割となっているようですが、実に清々しく表現しがたいほどの安心感を覚えるものです。暁鐘の音色と共に一斉に蝉しぐれとなるのも気持ちの良いものです。

大凡卑山の歴史に添うように約四百年間に渡って時を告げて来た大鐘(つりがね)ですが、現在は朝の五時と、正午前の十一時半と夕刻の六時、一日に三回鳴らされます。本来は寺の行事の時に鳴らされるものですが、昔は檀信徒方々が山仕事をされる時の時刻を知らせる役目も果たしていたそうです。

卑山の大鐘は創建当初1662年に鋳造されたもので、開山・大愚宗築禅師の頌偈(じゅげ)が刻まれています。人々はそれぞれの人生を歩む中で色々な衆生縁(しゅじょうえん)に遭遇しますが、その都度、複雑な心の葛藤を生んで行くものです。どこに心の安らぎを求めたらいいのかと申せば、先人達の慈恩に報(むく)いんと心を発する時、自然と安堵するものです。そのことを仏教では「報恩菩提心(ほうおんぼだいしん)」と言うのですが、その意味は、「先人の多くの慈恩に報いんが為に自分は今、周りの人々に何を成すべきか」の真心を起こす事を言います。父母の恩や祖先の恩から心が離れていくにつれ、心の不安が増大していく自分を知るべしであります。

「何事の おわしますかは知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」西行法師の歌ですが、日本社会から仏教理念が遠ざかっていく今、再び社会混沌時代を迎えようとしているように思えてなりません。暁鐘の音色に安堵感を覚えるのは、約四百年の時を経てもなお変わらぬ慈悲の音色に安堵するのだと思います。さて、愈々今日から8月です! 8月は「発がつ」、大いに心を発して頑張って参りましょう!友峰和尚より

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