和尚のちょっといい話
10月29日の朝を迎え、最後まで残ってお手伝い頂いた方々とのお別れでした。ロビーで何度も何度も別れを惜しみながらの御見送り、グリフィス教授が手配してくれた大学のバンに乗車して、間もなく出発しました。
とうとう和尚と妻の二人っきりとなってしまいましたが、和尚たちにはこの後もまだまだ大切な訪問先並びにグリフィス教授の友人達との交流会や、最後の大学生との授業が残っていました。アメリカでの全ての予定を終了した頃にはすっかり紅葉も進み、朝の氷点下の冷え込みなどは冬がもうすぐそこまでやって来ているといった感じでした。
ミシガンにある仁さんのお家を訪問、真理子さんに会いしました。
ニューハンプシャーで、グリフィス教授のご両親とお会いしました。
ベルモントで、グリフィス教授の妹のベッキーさんと会いました。
コネチカットで、メアリーさんと会いました。
ニューヨークで、グリフィス教授のご友人・和子さんのお家へご招待頂きました。
サラ・ローレンス大学での最後の授業
帰国に向けて出発の朝、JFK空港でグリフィス教授とともに
11月10日午後2時に成田空港に到着した翌日、ニュースでアメリカ北部が大雪になったとの報道を見て本当に驚きました。日本はこれから本格的な紅葉シーズンを迎えようとしており、まるでビデオの逆回しを見ているような感じでしたね。成田空港で小松行便を待つ時間には「幸せ感」に浸っていました。此の「幸せ感」は、夫婦では全く違っていました。妻は、綺麗な空港ロビーやウェイトレスの丁寧な対応そして、綺麗な綺麗な御トイレに感激していました。和尚はひたすら長椅子に腰を掛けて、誰を見るともなくボーッとのんびりムード。不思議なくらいゆったりした時間が流れていく感じでした。母国という言葉が有りますが全くにその通りで、小さきとき母親に抱かれているような安心感とでも申しましょうか。有りがたいですね!しかしながら心はまだアメリカにあったようにも思います。スピード感のあるアメリカ社会、それに比べて、時間が止まっているかのようなゆったりとした空港の風景。あれから一週間が過ぎ、時差ボケに悩まされての毎日。何かを考えようにも睡魔が突然襲ってきて、時間の感覚が全くに掴めない日々が続きました。不思議なことに、帰国から12日を過ぎて、夫婦とも同時に時差ボケが解消されました。人間の体はなんとも不可思議ですね。時差ボケが解消された途端、今度は不眠症と夜更かしが始まる始末、どうやらアメリカでの夢の続きがこれから夢の中で始まっていくようです。おわり
個展最終日を迎えた朝は、何とも言い尽くしがたい感傷的気分となったものです。それと同時に、一週間続いた緊張からか体が重く、最後の墨蹟デモンストレーションの際には意識もおぼつかず最初に坐禅を試みて集中力を高めながら、気力を尽くして挑みました。「虎」の字の大書に際しては、声を振り絞ってのパフォーマンスでしたが、書き終わった瞬間は流石に心地よさに酔いしれる感が有りました。
「喝」の字を大書した越前和紙に、多くの方々より寄せ書きをしていただきましたが、和尚にとっては何物にも代えがたい宝物となりました。近々表具をして皆様に公開したいと思っています。
パフォーマンス作品が乾ききらないまま、個展会場の撤収に入りました。撤収しながら、今年3月に開催された金沢・しいのき迎賓館での個展終了後の後片付けのことを思い出していました。あの時、次はニューヨークでやるぞ!と心に思いながらの撤収作業でした。あれから7か月、今度はニューヨーク個展会場での撤収作業でした。
黙々と進む、後片付け ( 撮影:Gene Foulk 氏)
日本へ返送する備品を、頑丈に梱包中 ( 撮影:Gene Foulk 氏)
不思議な気分が入り混じっての後片付け。野口先生そして社中の皆様、加賀さん、好さん、斎藤さんには最後の最後まで本当にお世話になりました。そして今回は仁さんという強力なスタッフが最後の掛け軸の梱包にお手伝いくださいました。空っぽになった会場を後にし、レストランで最後の夕食をしながら心ゆくまでいろいろな出来事を語り合い、笑い声の絶えない最高の一時を過ごしたのは言うまでもありません。本当にお疲れ様でした。つづく
澄み切った青空のもと、日曜日ということもあって朝から観光客の方や、今、お寺では「大人の書道展」を開催しているため、関係者の方々が大勢来られていました。本当に深まりゆく晩秋の大安禅寺の風情には心も和むものです。境内では小森庭園の末政さんが今月27日に立てられる門松の準備に入っておられ、これまた毎年地元の風物詩ともなっているだけに奥様の加勢を得て着々と進められていました。来年のテーマは「遊戯三昧」です。ひつじ年にちなんで和尚が決めたものですが今年の門松にはどうやら羊さんが登場しそうな気配でした。乞うお楽しみにといった処でしょうか。さてさて、アメリカ・ニューヨークのお話も愈々終盤に入ってきましたが、緊張感の毎日、やはり息抜きが必要ということで、10月26日の夜には皆様と共に「ブルーノート」へ出かけました。アメリカと言えばジャズ。ジャズと言えばブルーノート。と言われるくらい有名なジャズクラブで、和尚も是非行ってみたいと思っていましたから、ドキドキワクワクしながらの入場でした。
「Blue Note」にて 早々と満席
食事をしながら開演を待つ
いつしか超満員の店内
Dizzy Gillespie and All stars による、素晴らしいジャズの演奏
( 撮影:住職 )
やはり本場で聞くジャズライブは格別で、アドリブを交えての演奏には一遍にリラックスしたものです。同行の皆様はと言いますと、時差ボケと不眠症で、なかには心地良く深い眠りに有った方も多多居られたとか。無理からぬ光景でした。ジャズの演奏は単に聞くのみでなく、演奏者の表情や楽器のテクニックなどには感嘆の一言でした。禅の境地に似て、メロディの中に体全体が引き込まれていくような感触は生ジャズならではの体験でしたね。東京にも「ブルーノート」があるそうですが、本場アメリカ・ニューヨークで聞くことが出来て実に幸せ気分でした。和尚の撮った写真を見ればその雰囲気が伝わること必定です。帰路、興奮冷めやらない中、再びタイムズスクエアでの記念写真となりました。つづく
10月25日の御茶会のようす ( 撮影:加賀 好 さん)
サラローレンス大学での野口社中の御茶会も盛会でした。仁さんの通訳で御煎茶席本来の和やかな雰囲気の中でのお点前で和尚も参加しての楽しい時間を過ごしました。
( 撮影:Gene Foulk 氏)
社中の方もここに来て場所にも慣れて来たのか冗談も飛び交うほどの賑やかさで、時差ボケ半分、疲れ半分も入り混じってのお点前披露! 上手く行ったのか?そうでなかったのかは知る由もありませんが、とにかく大人気でした。和尚は御先に失礼したのですが、御茶席が済んで戻ってきたときの御社中の顔からはすっかり笑顔が消え去っていました。無理からぬことで、午前中には生け花デモンストレーション、午後1時からは生け花ワークショップがあり、それに引き続いての御茶会でしたからね。心の中で「皆様、大変ご苦労様でした。」って呟くのが精いっぱいの状態でした。短い開催期間での色々な催事でした。帰国後は未だ皆様とはお会いしていませんので、今回の経験に対しての感想はまだ伺っていませんが、本当にお疲れになったことと察します。
10月23日の御茶会のようす ( 撮影:Gene Foulk 氏)
( 撮影:Gene Foulk 氏)
( 撮影:Gene Foulk 氏)
素晴らしいお庭の景色を窓越しに眺めながらのサラ・ローレンス大学音楽室での御煎茶席、どう考えてみてもあり得ない光景でした。恐らく今後も無いことと思います。全くに想像以上の体験でした。文房流晴心会ご社中のご参加の皆様!如何でしたか?「風流ならざるところまた風流」の心境を獲得されましたでしょうか? 和尚的には、時間的余裕があれば大学のお庭で毛氈を敷いてお茶を飲みたかったですね。残念!! 墨蹟パフォーマンスの時に「紅葉秋風に舞う」と書き終わって、大学のお庭で好さんが集めてくれた赤や黄色の葉っぱを和尚が墨蹟に撒いた時には大きな拍手をもらいましたが、将に「風流ならざるところまた風流」でした。エイ!「参禅は須らく実践を要す」ですね。何もかもが新鮮な体験となった一日でした。つづく
屋根瓦の解体がはじまりました / 寳勝寺本堂
今日から三連休ですが、早朝より寳勝寺の屋根瓦外しの工事が始まっています。これから来年の3月まで本堂屋根の修復工事が続きますが、今回はトイレ並びに玄関式台復元工事も加わり完成が楽しみに待たれます。アメリカ・ニューヨークでの学生との色々な出会いの縁が今後、寳勝寺や大安禅寺につながっていくことを願っています。国際間の交流は今日のグローバル社会の中で最も望まれることで、日本の若き学生たちにもどんどん海外の学生と交流を図ってほしいと思います。
10月22日 「第1回 書道教室」にて
単に観光目的のみでなく、実際に海外で生活することは色々な意味で自分の持っている世界観を大きく変えていきますし、何より国々の文化や生活習慣の違いを体験することはお互いの価値観の違いなどを理解し尊重し合うことが出来る様になり、おおらかな精神を育んで行くものと思います。和尚の66歳でのチャレンジも更なる自己発見の手段でもありますね。10月25日と28日の2回にわたって実施された墨蹟パフォーマンスは、今回の個展開催に当たり和尚がもっとも重要視した催事で、これまでの数々の個展の集大成と位置付けてのデモンストレーションとなりました。
「喝」 ( 撮影:加賀 好 さん )
「全身全霊」という言葉がありますが、禅の端的を示す好機でもあり、「喝」一文字になりきった瞬間でもあります。グリフィス教授の同時通訳と禅語の解説を伴ってのパフォーマンス。ぜひ皆様にはユーチューブ動画をご覧いただきたいと思います。”燃え尽き症候群”という言葉がありますが全く逆で、まさに着火寸前、今尚スパーク状態が続いている感じですね。
本当に、今回の個展開催にはグリフィス教授の並々ならぬ思い入れがあったことと察しました。教授は永年、大学で宗教学を教えて来られ、特に「禅」については現在も道元禅師の書いた「正法眼蔵」の翻訳を続けられています。禅の精神の究極は言葉のみでは伝わりにくいものです。今回の墨蹟パフォーマンスは教授の希望でもありました。学生達や一般市民の方々がどのように感じとられたかは別として、少なからず禅僧の姿に直に接し書を介して「無心の当体」の一端を披露できたことと思っています。大学側からは副学長様はじめ多くの学生さん、グリフィス教授の奥様サラさんと御息女のハナさん、またメアリーさんもコネチカット州からお母様と共に見に来て下さり、なんとも嬉しい限りでした。つづく
「龍」( 撮影:Gene Foulk 氏 )
「紅葉秋風に舞う」( 撮影:Gene Foulk 氏 )
「紅葉秋風に舞う」( 撮影:Gene Foulk 氏 )
( 撮影:Gene Foulk 氏 )
サラさんとハナさん ( 撮影:加賀 好 さん )
ビデオ撮影をしてくれたメアリーさんと、お母様 ( 撮影:Gene Foulk 氏 )
( 撮影:Gene Foulk 氏 )
個展2日目はカリキュラムが目白押しで、午前10時から始まった学生との懇談会を皮切りに、御茶会、書道教室、そして午後4時より今回最初の坐禅会が「メディテーションルーム」で行われました。参加者は大学教授や学生さんなどで、少人数ではありましたがサラ・ローレンス大学で開催される初めての坐禅会でもあり、真剣な面持ちで約一時間の坐禅にトライされました。千里の道も一歩からですね。そもそも坐禅をした部屋は学生達のメディテーションルーム(瞑想室)として普段から活用されている場所でもあり、坐禅の布団や坐禅台もあり、あらゆるものに対応されている大学側の姿勢が伺えました。現在ではアメリカ全土に禅センターがあり、ニューヨークにも沢山あるとの事でした。爽やかな気分になったところで、今回初めての夜のニューヨーク市内観光とブロードウェイ「オペラ座の怪人」鑑賞に出かけました。
ホテルから車で10分足らずのところにある、ブロンクスビル駅 ( 撮影:斉藤公一氏 )
電車を待つ一行 ( 撮影:住職 )
( 撮影:斉藤公一氏 )
グランドセントラル駅にて
ニューヨークの中心部 タイムズスクエア
和尚にとっては40年ぶりのニューヨーク市内。タイムズスクエアの電飾にはさすがに圧倒されました。半端じゃないですね! 思わず新宿歌舞伎町を思い出していました。大がかりな電飾は日本の企業が担当しているとか、世界の観光都市パリで見たシャンゼリゼとはずいぶん趣が違った大都市の風景でした。開演時間までには夕食が間に合わないと言うので、仁さんがグランドセントラル駅の構内で沢山のサンドイッチを購入して下さったのですが、皆さん劇場前で並びながらの立ち食い状態となり、おまけに時間も迫り大急ぎで口に詰め込む羽目となりました。ブロードウェイでの観劇、これがホントの大感激! すばらしい歌劇に酔いしれた数時間でした。場内は世界各国からの観光客でぎっしり満員。座席も狭く和尚にはちょっと窮屈でしたが、ここは世界のニューヨーク、仕方のないことです。ガマンガマン。
マジェスティック劇場前にて、長蛇の列に並んでいます ( 撮影:斉藤公一氏 )
大混雑の中、皆でサンドイッチを食べました
満席の会場内、開演を待っています ( 撮影:住職 )
舞台の美しい装飾
終演後、大混雑の劇場ロビーで感激を語り合っています ( 撮影:住職 )
帰路、ネオン輝く大都会を馬に乗ってパトロールする警察官を見ました ( 撮影:住職 )
カッコいいので、何枚も写真を撮りました ( 撮影:住職 )
ワイワイガヤガヤ、地下鉄と在来線に乗り換えての帰路はニューヨークの夜を堪能しながらの休息日となったようです。つづく
晩秋の空 / 寳勝寺山門にて
晩秋の澄み切った青空が金沢の空に広がっています。この時期、北陸特有の筋状の雲が白山山系にもかかり、なんとも言葉では言い尽くしがたい風情を見せています。国外に出ますと一番に感じるのは空の色と雲の出具合で、アメリカなどはさすがに大陸を感じさせるに相応しい、際立った大雲が延々と高く広く連なっていますし、パリで見た雲はどことなく転々として、同じ大陸ながらその形は随分と違うものですね。またそれぞれに国の匂いも異なり、今回のアメリカ訪問では特にスーパーマーケットなどに行きますとその違いは歴然です。物の大きさもまた異なり、ジュースや牛乳などの入れ物に到っては驚くほどビックで、そこにも国の大きさの違いを感じ取ったものです。大体、町から一歩外に出ればハイウェイが連なり、日本での日々の生活がいかにスローライフであるかしみじみ感じ取った毎日でした。さて話しの続きですが、グリフィス教授がサプライズを用意していてくれたのが、サラ・ローレンス大学学長招待の夕食会でした。
夕食会にて、大学長様とともに ( 撮影:斉藤公一氏 )
会場エントランスにある一室
今回の「禅文化墨蹟禅画展と茶華道展」の開催は大学とグリフィス教授からのオファーで実現したものですが、夕食会場となった建物は大学内にある学長様の住居で、1921年に建造されたヨーロッパ中世頃の様式を思わせる実にクラシックな建物。写真にある通りの室内もおしゃれなインテリアで素晴らしい雰囲気でした。夕食会開催に当たり、和尚も事前にメアリーさんから教わった英語でのスピーチで感謝の意を伝え、その後は和やかな交流のひと時を過ごしました。野口社中の皆様は全員で童謡の合唱と民謡「丸岡音頭」の踊りを披露され、大学側の招待客を巻き込んでの大変な盛り上がりを見せたものでした。
スピーチのようす ( 撮影:斉藤公一氏 )
さきほどの緊張した御茶会とは打って変わってのはしゃぎぶりでしたよ! このような体験ができたことは参加者にとって生涯忘れる事の出来ない思い出となったようです。一歩一歩また一歩、順調に滑り出していく感じが伝わった楽しい夕食会でした。つづく
( 撮影:斉藤公一氏 )
開催初日、午前11時半から、野口美智子先生の真骨頂でもある「生け花デモンストレーション」が大学関係者向けに行われました。これまでにも何度も何度も、野口先生が花を生け込む姿を拝見させてもらって来ましたが、今回はまた格別に違っていました。実に丁寧でわかり易く、しかもゆっくりと説明しながら、一枝一枝を花瓶に差し込む姿には美しさを感じたものです。補佐をされた酒井む津子さんも、陰に日向に黒子としての役割を笑顔を以て対応されていた姿にも感心させられたものでした。師匠と弟子との阿吽の呼吸とでも申しましょうか。和尚などはどうしても花より人の方に目が行ってしまうわけですが、一つ一つの立ち居振る舞いこそが見事な生け花を作り上げていきます。静まり返った中での花切りばさみの音や息遣いが、見つめる人の心を打ちます。
興味深く見つめる学生さんや教授、大学関係者の方々 ( 撮影:斉藤公一氏 )
おひとりおひとりに、丁寧に説明される野口先生 ( 撮影:Gene Foulk 氏 )
( 撮影:斉藤公一氏 )
ワークショップのようす ( 撮影:斉藤公一氏 )
( 撮影:斉藤公一氏 )
サラ・ローレンス大学の学生さん、通訳をして下さった舟山先生とともに ( 撮影:斉藤公一氏 )
デモンストレーションの後、12時半から開催された生け花ワークショップでも多くの参加者が進んで生け花にトライしていました。国外での2度目の開催となった生け花ワークショップ。野口社中の皆様が堂々と日頃の腕前を参加者方々に教えている姿には、日本文化を身を以て伝えようとする意気込みを感じとった楽しい時間となりました。その日の午後4時からは、個展会場で大学長様はじめ大学関係者、VIPを招待しての野口社中の御茶席が開かれました。
静粛な雰囲気のなかでの、姉崎志乃様によるお点前
説明に聞き入るご列席の方々
姉崎志乃さんのお煎茶お点前披露は、和尚もこれまでに経験したことがないほど静粛で緊迫感漂うものでしたが、それはそれでまた風流な趣でした。何もかもが皆にとって初体験のアメリカ、ニューヨーク。サラ・ローレンス大学での一幕でした。つづく
先日、今回のニューヨーク個展に最年少で参加された小学6年生の加賀好さんからお礼の葉書が届きました。とても可愛い素敵な葉書に、綺麗な字で、感動した沢山の気持ちが綴られていました。すべての催事を無事終了した今、色々な思い出が蘇えってきますが、なかでも、好さんの参加は常に緊張感を緩和させてくれるマスコットのような存在でした。いつもぴょんぴょん跳ねている小リスのような感じで、周りの人たちへの気配りやお手伝いなどには感心したものです。彼女はクラシックバレーと書道を日々修業されているとか。個展初日の午前10時から行われた「第1回 書道教室」の時には生徒として参加し、学生さんの模範としての成るほど!見事な字を披露してくれました。
野口社中の丸子さん、北島さんとともに ( 撮影:斉藤公一 氏 )
書道教室のセッティングをお手伝いしてくれています
8名の学生さんとともに、好さんも書道教室に参加
好さんの字を見本に「楷書・行書・草書」の説明をされる 中 智恵子 先生
これまでにも色々な場所で個展を開催してきましたが、その都度思いますのはやはり、人との御縁を結ぶなかで自分を含めて誰かしらの成長を願うわけですが、今回は会期中に日々成長を見せる好さんに何より目を見張るものを感じたものです。勿論、参加されている方々も目に見えぬ成長と自信を獲得されていったことと思いますが、人生、若い時の経験ほど大切なものは有りませんね。アメリカのグローバル社会、しかもサラ・ローレンス大学の学生との学習となりますと相当なプレッシャーがあったと思いますが、堂々としかも丁寧に書き上げた彼女の心持は今後の修学にも大きな自信になる事と思います。書道教室が終了するや否や、そこはそれ、すぐに学童に戻って童心そのままに愛嬌をふるまう姿もまた可愛いものでした。
初めて書道を体験された学生さん!また得意げに書かれた学生さん!学生っていいですね!! 担当の中 智恵子先生もとっても素敵な方でした。和尚も久しぶりに教壇に立った面持でした。思えば大学時代に習得した教員免許、どうやらここにきて、アメリカでやっと役に立ったような気がしましたよ。つづく
話を進めましょう。今回も越前和紙作家・長田和也氏に無理をお願いして個展会場と御茶席の間仕切用にタペストリーをお願いしたところ、初めて見る実に見事な和紙作品が届いていました。個展会場を設営するときはいつも思うことですが、会場に立体感を持たせるためには何か仕切りが必要で、予め寸法など知らせてはいたものの高さもぴったりで場内がいっぺんに引き締まりました。越前和紙の香りとデザインの美しさにしばしうっとりしたものです。
野口先生が、タペストリーのポールをセッティングされています
丁寧に包まれたロールを開いてみると、美しい和紙作品が登場しました
テグスを通しています
大学専属の大工さんにお願いし、天井から吊るしているところ
位置や 傾きを、慎重に調整中…
「オッケー! 素晴らしい!」
長田氏は以前、ニューヨークで越前和紙の展示会をされたと聞いていました。今回は仕事の関係で参加できませんでしたが、新しい作品を提供して下さり本当に有り難く感謝いたしました。越前和紙のタペストリーのおかげで立体感のある作品展示が出来たことは言うまでもありません。真っ白な網目模様の越前和紙の隙間から眺める会場の風景も格別なものでした。サラ・ローレンス大学長様はじめ副学長様からも賛辞を頂きました。野口先生はじめ社中の皆さんも次々と手際よくお花を活け、より一層華やいだ雰囲気を醸し出していきました。ここが日本から遠い遠い国アメリカ合衆国ニューヨークの一角での生け花であることを一瞬忘れてしまうほど、皆さん真剣な面持ちで丁寧に生け込みをされていました。以前パリ個展開催に同行された社中の方々は流石になれたものでした。
二日間に渡って会場の設営がなされたわけですが、全てが終了したのは二日目の夕刻すぎで、愈々明日開催を前にして誰もが成功を念じたものでした。つづく