和尚のちょっといい話

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友峰和尚のちょっといい話 【 第4364話 】
2025年 07月 29日 談

 

連日35℃を超える猛暑日が続いていますが、熱い火にまつわる話では禅語に「石中に火あり 打たざれば出でず 人中に仏性あり 修ぜずんば現れず」とありますように何事も身を粉にして精進努力すれば必ずすべての者に御利益を授かることは必定で、むかし宝物収蔵庫の整理中、江戸時代に使用されていたと思われる火打ち石と鉄製の金具が対(つい)で保存されているのを発見し、試しに鉄金具で石を打ったところ火花が飛び散り驚いたことを思い出します。

 

火打ち石 と 金具


火打ち石は明らかに特別な石だったように思いますが、昔はマッチなどありませんから大変便利な火付け道具だったに違いありません。禅の修行も同じように生身の体ではありますが坐禅修行を通して泰然自若とした不屈の精神を鍛えることが出来ると思います。その不屈の精神と火花は同じ性格のもので、人間が力強く生き抜くための原動力ともなりうることと察します。

 

 

江戸時代、甲斐国の禅宗寺院・恵林寺が織田信長の軍勢に囲まれ燃えさかる寺の中にあって住職・快川紹喜が発した言葉「安禅は必ずしも山水を須(もち)いず 心頭滅却すれば火も自ずから涼し」が大変有名ですが、火が涼しいわけもなく熱いものは熱い故に禅定に入った心境を意味しています。また「煥熱の 地獄に通う 茶柄杓も 心無ければ 苦しみも無し」と一句詠まれた方もおられますように、要するに毎日の猛暑に対しての生活の工夫が猛暑を乗り切る為の人間の知恵なのかも知れません。

 

 

最近は小型手持ち扇風機や極寒タオル、扇風機付き日傘、扇風機付き作業着などなど色々な暑さ対策グッズが登場していますが、まずは大本山妙心寺の生活信条にありますように「一日一度は静かに坐って 身と呼吸と心を調えましょう」が安価な暑さ対策の第一歩なのだと思います。「心頭滅却すれば火もまた涼し」の心境には程遠い今日この頃の暑さのようです。くれぐれもご自愛ください。友峰和尚より

 

「 寂 」 渓仙 書

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