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第1318話

2017-03-28

3月も残すところあと3日間となりました。春休みシーズン真っ只中で学生達の姿を多く見かけますが、なかでも新社会人を迎える方々のあまりにも新鮮な出で立ちには思わず微笑んでしまいます。和尚にもきっとそんな時があったのでしょうが、遠い遠い昔の話です。大学を卒業して間もなく西宮・海清寺専門道場の門を叩きましたが、4月、春を迎えたというのに小雪の舞い散る中での入門でした。「頼みましょう!」と庫裡玄関の上がり階段に身を伏せ、体を九の字に折り曲げての懇願の掛け声でした。「ど~れ~」と、長く低い声が奥の方から聞こえて来ました。新社会人を迎える会社とは対照的に、歓迎を拒む入門御断りの挨拶を受け、以後3日間は「庭詰め」といって入門を乞うため玄関の階段で只管ひれ伏しました。今となっては実に懐かしい思い出です。

佐藤義英氏 著 「雲水日記」より引用しました

3日間が過ぎてようやく玄関から上がって部屋に通されたものの、それ以後は5日間に渡って昼夜兼行、坐禅三昧の日々でした。中にはその途中でリタイヤしていく仲間もいました。あれから50年の歳月が流れましたが、決して忘れる事の出来ない僧堂入門時の記憶です。

最近は「記憶がない!記憶がない!」の言葉が飛び交う社会。和尚のこの記憶は、生涯忘れる事の出来ない大切な記憶です。新社会人となる皆様方の今後の健闘を祈念したいと思います。友峰和尚より

第1317話

2017-03-27

新横綱・稀勢の里、大阪場所優勝のニュースでもちきりの一日でしたが、勝負の世界の厳しさを垣間見た千秋楽での決戦でした。優勝インタビューで稀勢の里が「何か別の力が働いた!」とのコメントでしたが、それこそ「無我無心の働き」だったと思います。それは奇跡ではなく、稀勢の里の気迫でありまた実力でも有ったと思います。「真理を行ずる者には必ず仏天の加護が有る」とは法沖禅師の言葉です。ある意味において無我無心の闘いであった結果だろうと思いました。兎に角素晴らしい闘いを見て感動したものでした。

さて本日は東京からお檀家、津田様の御来寺でした。ふれあいパーク霊苑「奥の院」に御先祖のお墓が改葬されましたが、この度の工事で、清々しい聖地と成りました。津田様はこれまでも「盂蘭盆会」や「春季彼岸会」など卑山行事に必ず御参詣下さっており、一層お寺とのご法縁が深まっています。人生には色々な人との出会いが有りますが、どの出会いも不可思議な縁で結ばれているようです。

午前中には本多町の兼務寺院、瑞光寺にも法務で出掛けましたが、それとても仏縁あっての事と思います。和尚のこれまでの人生を振り返ってみると、なにもかもが「あるがまま」に肯って来たように思います。与えられた仕事を一所懸命に遂行していくのも、また風流なのかも知れませんね。大安禅寺の桜の開花が待ち遠しい昨今です。友峰和尚より

第1316話

2017-03-26

御近所で生花店を営む 檀信徒御親戚の方から 春のお花を頂きました

「皆さんお元気にお過ごしでしょうか? 大安和尚です!」 懐かしい和尚のキャッチフレーズですが、臨済宗妙心寺派金沢寺院に兼務住職の任命を受けて早7年目に入っています。現在では寳勝寺を中心に、瑞光寺・少林寺・傳燈寺の4ヶ寺の法務に携わっています。最近は頭の中がこんがらがって、法務地の寺院名を間違えることが多々あります。どの寺院も檀家数が少なく寺院運営が極めて厳しい状況で、先ずは寳勝寺から再建に当たっているわけですが、同時に後継者の育成という難題を抱えています。一カ寺の寺院運営に必要な檀家数は大体300戸と言いますから、金沢寺院4ヶ寺すべてを合わせても約60戸ということは今日まで維持運営して来られた先住職の並々ならぬ御苦労が伺えます。

寳勝寺のおだまき 鉢植えにて

果たして維持運営が先かそれとも布教活動が先かと問われれば実に悩ましいわけで、しかし活動の拠点をなんとかしなければ布教活動もままならないのが現実です。いま和尚が取り組んでいるのは先ずは寺院の復興ですが、人の集まる拠点づくりに重きを置いてのアクションとなっています。「寺離れ」の原因は「テレビ離れ」の今日の社会状況にも通じるように思います。近年では「見る」社会から「実地体験型」社会に大きく変化していくようです。娯楽施設に於いてもそのような傾向が有るように、もはやバーチャルリアリティなるアクション体験型施設に人気が集中する時代、寺院も布教活動の思い切った工夫が求められています。伝統を守りつつ新しい時代への創意工夫に活路を見出したいと思うものです。さて日曜日の寳勝寺カフェ、そのような和尚の切なる思いを知ってか知らいでかは余所に、お客様の寛ぐ姿が何処と無く仏様の姿に感じたのは真に摩訶不思議な体験でした。「南無観世音菩薩」 友峰和尚より

春の光さす 応接室にて

第1315話

2017-03-25

和尚の甥っ子 克則さんとともに

今日は久しぶりに「土曜寺カフェ」のお手伝いでしたが、午前中には宝塚市在住の甥っ子・克則さんが訪ねてくれました。仕事の関係で金沢に来られ、時間の合間を縫っての訪問でした。二年ぶりの御対面!で、積もる話もあって実に楽しい時間を過ごすことが出来ました。一緒に昼食を共にしましたが、ぽかぽか陽気の中、お店に行く途中の神社境内の桜がもう咲き始めていました。最近は法務が忙しく親戚の方とも疎遠になりがちだった為、懐かしさも相まってついついおしゃべりが長くなってしまいました。

午後からはカフェの手伝いに入りましたが、こちらも久しぶりで仕事のリズムも忘れており、スタッフの足手まといとならないよう敢え無くリタイアする羽目となりました。所謂「お邪魔虫」といった処でしょうか。良いお天気だったので霊苑工事の進み具合を見に行きましたが、職人さんの見事な仕事ぶりには感心するばかりでした。

克則さんも現場を視察してくれました

現在は歩道のラン張り工事をしていますが、一枚一枚丁寧にお洒落な模様を作りながらの細かい作業となっています。今年は例年になく雪も無くまた良い天気が続いている為、工事は順調に進んでいるようです。本当に神仏の御加護と有り難く感謝するばかりです。「人生はリズムである!」和尚もそのように思います。自分のリズム、周りのリズム、天地のリズム、それぞれのリズムが良きハーモニーとなってかみ合っていくところに人生の醍醐味が有ろうかと思います。職人さんの技もリズムであろうと思った土曜の午後のひとときでした。友峰和尚より

あずきと白玉と蕨餅の抹茶パフェ 金粉入り

春季彼岸会 住職法話

2017-03-25

平成29年3月12日 寳勝寺春季彼岸会 住職法話より

 

 「病みてこそ道心(どうしん)の起こる候 不幸はこれ道(どう)の幸いなり」

この言葉は今から約六百年ほど前に、花園法皇が妙心寺開山・無相大師(関山慧玄)と出会った折に言われた言葉であります。花園法皇は子供の頃から体が弱く、若くして譲位されました。国の頂点に立つ運命にあって色々な悩みを持ち、体も病んでいた、そんな中で、「この運命であったからこそ、やがて生涯の師となる無相大師とめぐり合うことが出来た。心とはなんぞや、幸せとはなんぞや、あの世とはなんぞやと、自分の心に向かって問いかけることが出来た。なんとありがたいご縁を頂いたことか」と感謝する言葉です。やがて花園法皇は花園御所(離宮)を寄進され、無相大師を招いて妙心寺を開き、祖霊の供養とともに万民の平和を願ったということであります。 ・・・今日は、檀信徒皆様はじめ㈱ココ・プランニング様、関係皆様が集って無事、春季彼岸会法要を厳修することが出来ました。おそらく寳勝寺では、創建当初からこうして人々が集まって綿々と法要が行われてきたのでしょう。でも一度途切れかかった、そのぎりぎりのところで再びこの御縁を得ることが出来たことこそ、「病みてこそ道心の起こる候 不幸はこれ道の幸いなり」であろうと思います。私がここへ来たのも仏法の縁です。荒れ果てた寺だったからこそなんとかしなければと思い立ったわけです。そして今日のような彼岸晴れの佳き日に御先祖供養が出来たこと、これはすべて御先祖様との御法縁の現れであり、ここに集まっているお一人お一人の心がそうさせているということです。

・・・普段の忙しい生活の中では「仏法」に出会う機会も少ないことと思います。お寺というのは年に何度か訪ねて、御先祖供養とともに自分の心と出会う場所でもあります。人間は生まれて以降、ずっと外の世界ばかり見ています。「あの人は幸せ、自分は不幸」などと比較して、周囲の出来事に囚(とら)われてなかなか自分の心を見つめる時間が無い。我々は臨済義玄禅師を祖とする臨済宗ですが、その臨済義玄禅師が説いたのは“今ここに居る肉体の中に本物の自分が潜んでいる、自分の中にある真(まこと)を見よ”ということです。

「赤肉団上に一無位の真人あり 未だ証拠せざる者は、看よ、看よ。」

焼けば灰、埋(うず)めば土となっていくこの自分は一体なんなのか、自分に問いかけよ。と、臨済義玄禅師は叱咤激励しているわけです。われわれの肉体はずっと自分の物ではありません。いずれ返さねばならない、そうであるのに、「あれもほしい、これもほしい。」と体いっぱいに引っ付けようする。なにも欲しいものは無い、今、ここに居れば充分だという心。「本来無一物」「無心」だと悟ること。「無一物中無尽蔵 花有り月有り楼台有り」 そういう安心(あんじん)の心を忘れずにお過ごし頂きたいと思います。 (事務局編集)

第1314話

2017-03-24

穏やかなお天気の一日となりました。午前中は霊苑工事現場を視察しましたが、整備が進むにつれ今度は寳勝寺本堂裏手の壁面が丸見えとなり、新たな修復工事が必要となってきました。当然予想された事ですが、先般、金沢市歴史建造物整備課職員の指導を受けて「寳勝寺建造物保存」の目的から修復する事にしました。次々に修復箇所が発生していきますが、寳勝寺は寺町寺院群の中でも極めて創建当初の遺構を今に伝える貴重な建物だと和尚は考えています。それ故に建物の方も修復を望んでいるのだと思うのです。自坊の大安禅寺もしかりですが社会情勢が急変すれば修復の機を失いかねない為、今やらねばと考えています。それにしても今後の修復工事には多額の浄財を必要としています。為せば成る!とはいうもののそう簡単な事では有りません。「文化財保護伝承」の精神だけを根底に努力あるのみです。

昨晩の木曜坐禅会より

坐禅後の茶礼にて 臨済録の問答が話題となりました

さて昨日、金沢市観光協会主催の「金沢美味」クーポン券ですが、写真の如く「宝勝寺カフェ」が掲載されています。メニューは「金沢銘菓の三種盛り合わせと抹茶・加賀棒茶のセット」1000円クーポン券です。「君子財を愛すこれを得るに道あり」という言葉が有るようですが、心の癒しと共に諸堂修復の浄財に少しでも貢献できればと願っています。皆様の御来寺を心よりお待ち申し上げております。「南無観世音菩薩」 友峰和尚より

 

第1313話

2017-03-23

金沢市観光協会の米田様が朝一番に来られ、「金沢美味」の広報パンフレットを持参されました。金沢では観光客誘致に関しての様々なプランを打ち出しています。その中のひとつとして、御食事や甘味のクーポン券を作成し”金沢で愛される地元グルメや甘味をちょっとオトクに選べる嬉しさ”をキャッチフレーズに「金沢美味」が新企画として動き出しています。今回、寳勝寺もその参画要請を受けて仲間入りしましたが、今後このクーポン券を利用される方には寺カフェ特別メニューが提供されることになっています。このほかにも、県内外各種団体の会議場としての寺院利用など、本当に北陸新幹線開業後の集客に全力を挙げているようです。皆様も是非ご利用ください。午前中には小松市在住の檀家様の月諷経に出掛けましたが、次第に法務の方も多忙になってきました。午後には㈱ココ・プランニング霊苑デザイナーの宮崎氏はじめ㈱河原市石材社長、㈱豊蔵組現場監督・高島氏との打ち合わせが有りましたが、霊苑の植栽も本格的に始まり、細部に渡る工事進行の打ち合わせとなっています。毎日の改葬工事の進捗状況についてはホームページでお知らせしていますが、現場では施工業者の方々とのかなりデリケートな打ち合わせが続いているようです。

また、宮崎デザイナーからの依頼で、霊苑永代墓の擁壁部分に和尚直筆の「舎利礼文(お経文)」のレリーフを設置し、その頭上入り口の円形ガラスの蓋には「想」という字を刻むこととなりました。霊苑各所には、金沢の伝統工芸である加賀友禅、九谷焼、金箔、象嵌等をモチーフにした作品が組み込まれることも予定されています。悠久の歴史ある金沢市の中央に位置する伝統的建造物群「寺町寺院群」にいま、色々な想いを込めて「寳勝寺ふれあいパーク霊苑」の工事が進められていきます。友峰和尚より

第1312話

2017-03-22

傳燈寺 中庭 の しだれ白梅

なんとなくぼんやりと物がかすんで見え、すわ一大事! 愈々和尚の老化現象もここまで来たのかと思いきや、なんと眼鏡にホコリがびっしりこびりついていました。おまけに長いまつ毛の上にもしっかりとホコリが付いて、これではかすんで見えても仕方がないと思いました。今日は終日、兼務住職先である傳燈寺の大掃除だったわけですが、それはそれは徹底的に掃除しました。

いつも寺カフェのお仕事でお世話になっている高倉様ご夫婦と木曜坐禅会会員の須貝君そして地元町内会長の西川様も加わって、強力な助っ人の御協力を得ての大掃除でした。どの部屋も見違えるほど綺麗になりましたが、たった一日ではとてもとても全てをクリア出来ず、また日を改めて掃除する事にしました。不思議なもので帰り際にお寺を振り返って見たら、本当に輝いて見えたものです。法灯六百年の歴史を有する禅寺だけに、今後の整備が待たれます。

夕刻、檀信徒先祖代々ならびに先代住職の彼岸供養をしました

さて「一に掃除、二に笑顔・・」です。和尚の宗旨は「掃除宗」ですから頑張ってお掃除を続けていきたいものです。今日は終日暖かい良いお天気でした。お掃除には持って来いの日和でした。神様も仏様も御先祖様もみな応援してくれているように思った一日となりました。「南無観世音菩薩」 友峰和尚より

第1311話

2017-03-21

寳勝寺ふれあいパーク 奥の院の「しだれ梅」

この時期はめまぐるしく天候が変わっていきますが、確実に春本番に向かっているようです。朝方から雨となりましたが、雨の音にも微妙に春の訪れを感じるものです。ニュースでは全国トップを切って桜が開花したところもあるとか、本当に春の到来が待ち遠しいですね。今日は移動日となり寳勝寺に入りましたが、霊苑工事も次第に全体像を現わしつつあるようです。到着して早速に「奥の院檀信徒墓地」を視察しましたが、周りの景色に溶け込んで卑山約四百年の歴史の重みを感じさせてくれる、重厚な雰囲気を醸し出していました。新しく造成される「ふれあいパーク霊苑」の工事も順調に進められており、大変嬉しく思いました。

寺に着くや否や来客の応対となりましたが、六年前、和尚が兼務住職に就任した時とは違って最近は頻繁に人の出入りも増えている為、留守をすることが出来なくなっている状態です。全国的に無住寺院が増えつつある状況下の中、寺院の再建と後継者育成という難題に取り組んでいますが、先ずは人の集まる寺院を目指しています。その意味において、寳勝寺は次第に活気ある寺院へと復活しつつあります。昭和初期には世界的宗教哲学者・鈴木大拙氏や西田幾多郎氏が卑山へ坐禅に訪れていた事を聞き、尚更身の引き締まる思いがします。禅寺は「坐禅行」が最も大切で、坐禅行を一般に普及させる事を主眼に置いて今後も坐禅会の発展に力を注いでいきたいと念じています。寳勝寺の坐禅会は今月23日木曜日の午後6時からです。皆様の御参加をお待ちしています。坐禅に来たれ!

北條淳子様から頂いたハンドクリーム さっそくに使わせていただきます

第1310話

2017-03-20

涅槃図の真前で奉詠する御詠歌の皆さん

清々しい彼岸会の朝を迎えました。早朝の澄みきった空気感の中での外作務となり、まったくに意識を挟む余地のないほど気持ちの良いものでした。近年、涅槃会と彼岸会を合わせて修業するようになりましたが、本日は多くの参詣者のもと午前十時半より法要が営まれました。法要終了後には新命副住職による「涅槃図絵解き法話」並びに「花団子撒き」が世話方さんによって行われました。

彼岸会法話

毎年この日のみ公開される「涅槃図」ですが、高さが約四~五メートル、幅が約三メートルほどある大きなものです。作者は福井藩のお抱え絵師「狩野元昭」の作品で筆止めの作とも言われているものです。全国的に多くの有名な絵師の作品が現存していますが、とりわけ大安禅寺の涅槃図は立派な大作です。新命副住職による「涅槃図絵解き」は二年ほど前から行われていますが、わかりやすい法話には定評が有り一年を通して色々な行事が開催されるなか、布教の一環としての「法話」は欠かせない重要なものです。禅寺に有っては「読経」「説法」「坐禅」が三位一体となって実践されています。

世話方さんによる花団子撒き

手作りのお寿司が配られました

さて本日は御先祖のお墓参りに多くの方々が出掛けられたことと思いますが、祖霊供養ほど心のやすらぎを感じるものは有りませんね。なぜなら祖霊がそのまま自分の心だからです。「自分の心を拝み、先祖の恩に感謝する日」一日を心安らかに過ごしたいものです。友峰和尚より

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