和尚のちょっといい話

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友峰和尚のちょっといい話 【 第1336話 】
2017年 04月 15日 談

暖かくて長閑な土曜日の朝を迎えました。境内を取り巻く山々の木々はいっせいに新芽を吹き青々として、美しいのひと言です。午前中にはお檀家様の年忌法要に出掛けましたが、桜吹雪の中、道路がピンク色に染まっていました。和尚のアトリエから望むもみじの新芽も赤子の手を開くかのように初々しく可愛らしく心を和ませてくれます。このところ外作務(そとざむ)の力仕事が続いていたため、午後からは休息を取りました。昨晩は金曜坐禅会で十数名の坐禅会員の方々が参加されましたが、カエルの合唱が境内に響き渡る中での瞑想時間となりました。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」とはかの有名な俳人・松尾芭蕉の一句です。坐禅中の法話にこの一句を引用して心の有り様を説きましたが、皆様、この句の中に芭蕉の心境を読み取ることが出来ますでしょうか? なんでもないような一句に聞こえますが、芭蕉の深い心境を現わしています。何度も何度も言葉を吟味して「五・七・五」の17文字の中に芭蕉その人その悟境を現わす一句です。我々を取り巻くすべての音の中にもそれぞれの人生が現れ出でるように、カエルの飛び込む音にさえ「無心無我」の響きを感じ取るものです。この句には次のような言葉が添えられています。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」と。身を捨てる事の難しさが我々の世ならば、坐禅は思い切って身を捨て切る手段でも有ります。「なり切る!捨てきる!思いきる」姿が芭蕉の人生を支えていたのかも知れませんね。さて、皆様はこの一句をどのように捉えられますでしょうか!南無さん!  友峰和尚より

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